『ルベーグ積分30講』

ここ数日で『ルベーグ積分30講 (数学30講シリーズ)』一気に読んだ。いや、本来数学の本など一気に読めるものではないのだが、読んだ。証明は全部とばしてとにかく読んでみた。ルベーグ積分で難しいのは測度の持つ抽象性だと考えるにいたり、「読める!」と思って読んだ。そうしたら読めるね。測度まではかなりキッチリこれまで勉強したので、証明なんかは覚えちゃいないけど本質は掴めていると思う。こういう状態で読むとこの本良い本だ。最初に使うべき本では決してない。というのも初学者には余計な情報が多すぎる。ある程度ルベーグ積分に慣れ親しんだ人が読むと面白く読めるだろう、という本。

抽象的な測度論をある程度理解し、位相空間論がある程度分かっていれば結構いける。測度の難しいところは完全加法性にあるのだろうけど、なにしろある集合を無限個の集合で覆うというのがなかなか理解できない。しかもこの場合の無限は可算である必要はないようだ。ベッタリ無限で「無限個」という表現が既におかしいけど、なにかの極限としての無限ではなく、いきなり無限個の集合で覆うのだからイメージが掴みにくい。この本ではこれも「極限」と表現しているけど、それはちょっと違うんじゃないかと思う。途中で選択公理云々の話が出てくるけど、そっちの方面の話だろう。いきなり無限個の集合を選んで覆うわけでだから、本質的に選択公理が絡んでいるように思う。そして、その覆いをさらに極限を取るからなお難しい。解析的な感覚よりも位相的な感覚が必要な部分だと思う。にもかかわらず、位相的な尺度である濃度と測度論における測度の不一致が著しい。アレフゼロなのに零集合ってのはナンダカナーって感じだ。零集合について色々書かれているのが『ルベーグ積分講義―ルベーグ積分と面積0の不思議な図形たち』なのでこれの4章を読むのも面白いかも知れない。ちなみに僕は主にこの本の3章まででルベーグ積分を学んだ。証明も分かり易いし全体に分かり易かったように思う。