一番最初の部分

本家「つれ数」で「1+1=2」の証明らしきものをやってみたけど, ここまで根っこに戻って考えることは普段無いので結構難しく感じた. 読み返してみると, 普通の人には「こいつ一体何書いているんだ?」っていう内容になっているので, こっちでもう少しなんのことかわかるように書いてみたい.

そもそも一般的には自然数だとか整数が何かとか,それらの足し算・かけ算なんかはもう当たり前すぎて何が定義で何が定理かなんて誰も気にしていないことだろう. 僕もその一人で1+1=2なんて定義なんじゃないの?と思ってたクチ. それで今回ちょっと調べてみたらどうもそうではなくて, それどころかイマドキの自然数は0から始まるそうで, そういや昔,誰かが「イマドキの教養のある人はゼロを自然数に含めるものだ」みたいなことを言っていたのを思い出した.


ペアノの公理系から出発してみよう. 0からスタートして「0の次」を1, 「1の次」を2 と順に決めてやる. このままでは数字が綺麗に並んでいるだけで, それぞれの関係は決まっていない. よって次に足し算を定義しよう.
なーんにもないに近い状態からスタートしているからこういうことを考えたことがない人からすれば, わざわざ足し算を定義するってのがイメージできないかも知れない. この段階ではまだ数が順に並んでいるってだけ. 足し算だとかそういう演算は一切定義されていない状態だ. 精確に言えば唯一定義されている演算は任意の「自然数」に「その次」の自然数を対応させる1対1の写像である.

足し算は帰納的に定義するので2段階に分かれる.


どの数にも0を足しても変わらない, ってのは定義としておく. となれば1+0=1は定義として成立する.
これはつまりn+0=nってことなんだけど、可換法則が成立するかはこの段階では未証明なので0+n=nは言えないことに注意.

さて問題の1+1だが, その前に一般的な足し算の定義をしておかないといけない.

m+nが決まっているとすると,
m+(nの次の数)=((m+n)の次の数)

と足し算を定める. いま, 1+0=1はわかっているから, 1+1=1+(0の次の数)=((1+0)の次の数)=(1の次の数)=2 となることがわかる. と,いうわけで, 一応これも証明といえば証明ですな. ある数の次の数との関係を+1で定めている様なものだからほとんど定義のまんまの証明だけど...

m+nが決まっている,というのは例えば4+3=7が分かっているとすると, ということだろうと思う. そうするとこの時, 4+(3の次)=(7の次)=8であることがわかる.4+(3の次)=4+4だから,
結局4+4=8が導かれるってわけだ. 1+0=1 は公理だけど, 0+1=0+(0の次)=((0+0)の次)=(0の次)=1という証明が必要.順に, 公理(0の次は1), 足し算の定義, 公理(n+0=n)のnに0を代入,再び公理, という理由が付せられる.

だからなんなの?って話だけど, まぁ一度はこういうことを考えておくのもよいでしょ.