可算個の不連続点を含む選好

辞書式選好だと効用関数を作れないというのは、僕としては無視できない由々しきことだと感じる。人間誰しも「これだけは譲れない」というモノがある。典型的には自分の命。これを「財・サービス」の一つとして数えるのはナンセンスである、と論じるのもよかろう。しかしながら、理論というヤツはその適用範囲が広ければ広いほどよいし、戦争などを考えるとそれはやはり自分の命を何かと天秤にかけて参戦するのだろうと思うから、普段の生活において不自然に感じるようなことでも理論の範囲内に収めておきたい。

また、このような辞書的選好を持つ財をこれまで考えてきた財空間(完備・推移・連続)にたった一つ追加するだけで、効用関数の存在が云えなくなってしまうのはあまりに脆弱な理論的基礎と言わざるを得ない。そのような扱いにくい対象を含まないで理論を構築してしまうのは、証明すべきことを仮定し待っているようで気持ちが悪い。

そこでなにゆえ辞書式選好だと効用関数が導けないかを考えてみると、不連続点の数が多すぎるからなのではないかと予想される。そこで、僕は選好が完備・推移・連続な集合である、という仮定を少しだけ緩めて完備・推移・可算個の不連続点以外は連続、という条件でうまく効用関数が導ける、と予想する。

ただ、辞書式選好の不連続点の集合の濃度は一般には非可算、つまり連続体の濃度だから、この予想が正しかったとしても上記の問題の解決にはならない。うーーん、なんか良い方法がないかなぁ。

ちなみに上の僕の予想の証明に関しては、不連続点は高々可算個だから、それ以外の点、つまり連続な点についての効用関数を構成してから、うまく間にはめていけばよいのだと思う。どう不連続なのか、という場合分けが必要になると思う。例えば、不連続といっても、他に無差別な点がある場合とない場合があるだろう。