「借金国家と預金国家ではゼロ金利政策の意味は正反対」はトンデモ

借金国家と預金国家ではゼロ金利政策の意味は国民の立場からすると正反対 - 木走日記のブックマークで「これはトンデモです」と書いたら、「理由を知りたい」という人がいたので反応してみる。

とりあえず日米の貯蓄率等に関する事実確認については2008-12-23を参照してもらうのが良い。でもって、僕がトンデモと言っているのは特に「ゼロ金利政策の意味は正反対」という部分。id:kibashiriはじめ、多くの人々(与謝野馨経済財政担当大臣も含む)が同じように誤解しているが、ゼロ金利政策、というか金融緩和政策はとにもかくにも物価安定を通じて持続的な経済成長を実現するためにあるのであって、預金者に不利だとかそういう議論自体が間違い。マクロ経済政策にミクロの問題を混ぜると何も出来なくなってしまう。金融政策はマクロ経済政策の中では公共投資や減税に較べて資源配分を歪めにくいので、まだましな方。

たしかに、見た目上はゼロ金利政策は預金者にとって不利なんだけど、デフレ下においては実質金利はプラスだし、そもそも他の資産(財への消費も含めて)よりも有利だと判断しているからこそ預金に走るのがデフレ経済。逆にデフレ中に借金をしてまで投資するのは危険なわけで、実際いまでは企業までもが貯蓄過剰になってしまっている。Robert E. LucasがBen Bernanke Is the Best Stimulus Right Now - WSJで書いているようにデフレになると貨幣そのものが価値を持ってしまう、より正確には貨幣そのものの価値が上昇し続けるから、目の前の消費を抑えてまで貨幣で資産を保有しようとしてしまう。結果として経済は萎縮してしまい(Lucasは失業などには触れていないが)失業や設備の稼働率の低下を生んでしまう。つまり、デフレを放置することは誰のためにもならない。だからゼロ金利だろうが、CPの買い上げだろうが、ケチャップの買い上げだろうが、買えるものは何でも買って貨幣を堕落させてデフレを脱却し、正常な経済成長経路へと戻してやらないといけない。その過程で多少の分配上の問題は出るかもしれないが、この部分に神経質になってまともな経済政策を取らずに国民全員で貧しくなりましょう、というのはあまりに愚かでトンデモですよ、と僕は言っているのである。